Amazon Linux2 でポート変換する
AWS の EC2 インスタンスは複数の ENI (≒ NIC) を割り当てたり、ひとつの ENI に複数のプライベートアドレスを割り当てることが可能です。 「何個割り当てられるか?」はインスタンスタイプによって異なり、大型のインスタンスである程、最大数も増えます。 t2.nano や t2.micro でも「ふたつまでの ENI」「ひとつの ENI にふたつのプライベートアドレスまで」設定することが可能です。 例えば「ひとつの ENI にふたつのプライベートを割り当て」た状態で firewalld のポート転送機能と組み合わせると、以下のようなトラフィックフローを実現することが可能です。
今回は実際にこの設定を行う手順をメモしておきます。
テスト環境
今回は以下の環境でテストしました。
- Amazon Linux2
- t2.nano インスタンス
- ポート転送させたいアプリケーションは、予めセキュリティグループで許可してある
EC2 インスタンスは上記の条件で作成済みですが、特に何も設定せず、かつ電源オンの状態からスタートします。
Step.1
最初に作成した Amazon Linux2 インスタンスの ENI を選択し、IP アドレスの管理
をクリックします。
Step.2
新しい IP の割り当て
をクリックします。
Step.3
すると、新たに IP アドレスの欄が追加されます。 この状態で右下の 更新する
をクリックします。
Step.4
これで ENI にプライベートアドレスが追加されました。 キャンセル
を押して元の画面に戻ります。
Step.5
ENI に セカンダリプライベート IPv4 IP
が追加されているのが分かります。
Step.6
次は EIP の設定画面に移ります。 予め 新しいアドレスの割り当て
を実行し、ふたつ EIP を取得しておきます。 取得した EIP のうち、一つ目を選択して アドレスの関連付け
をクリックします。
Step.7
EIP とプライベートアドレスの紐づけを行います。 リソースタイプは インスタンス
、インスタンスには 該当のインスタンス ID
、プライベート IP
には一つ目のプライベートアドレスを選択し、関連付け
をクリックします。
Step.8
これで「一つ目の EIP とプライベートアドレス」の関連付けが完了しました。 閉じる
をクリックします。
Step.9
続いて、二つ目の EIP もプライベートアドレスとの紐づけを行います。 取得した EIP のうち、二つ目を選択して アドレスの関連付け
をクリックします。
Step.10
リソースタイプは インスタンス
、インスタンスには 該当のインスタンス ID
を選択するところまでは先ほどと同じです。 プライベート IP には二つ目のプライベートアドレスを選択し、関連付け
をクリックします。
Step.11
これで「二つ目の EIP とプライベートアドレス」の関連付けも完了です。
Step.12
ここからは EC2 インスタンスに SSH ログインして作業を行います。 AWS の管理コンソールから「二つ目のプライベートアドレス」を割り当てましたが、インスタンスが起動したままである為、反映されていません。 ip address show
を実行すると eth0 にプライベートアドレスが一つしか割り当てられていないことが分かります。
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13 | # ip address show
1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN group default qlen 1000
link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
inet 127.0.0.1/8 scope host lo
valid_lft forever preferred_lft forever
inet6 ::1/128 scope host
valid_lft forever preferred_lft forever
2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 9001 qdisc pfifo_fast state UP group default qlen 1000
link/ether 06:18:aa:8a:ae:6a brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
inet 192.168.224.53/24 brd 192.168.224.255 scope global dynamic eth0
valid_lft 2331sec preferred_lft 2331sec
inet6 fe80::418:aaff:fe8a:ae6a/64 scope link
valid_lft forever preferred_lft forever
|
ネットワークサービスの再起動だけで上手くいくのかも知れませんが (?)、ここでは念のため OS 毎再起動してしまいます。
再起動が完了すると eth0 にプライベートアドレスが増えていることが分かります。
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15 | # ip address show
1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN group default qlen 1000
link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
inet 127.0.0.1/8 scope host lo
valid_lft forever preferred_lft forever
inet6 ::1/128 scope host
valid_lft forever preferred_lft forever
2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 9001 qdisc pfifo_fast state UP group default qlen 1000
link/ether 06:18:aa:8a:ae:6a brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
inet 192.168.224.53/24 brd 192.168.224.255 scope global dynamic eth0
valid_lft 3114sec preferred_lft 3114sec
inet 192.168.224.8/24 brd 192.168.224.255 scope global secondary eth0
valid_lft forever preferred_lft forever
inet6 fe80::418:aaff:fe8a:ae6a/64 scope link
valid_lft forever preferred_lft forever
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Step.13
Amazon Linux2 の初期状態だとポート転送に利用したい firewalld がインストールされていません。
| # systemctl status firewalld
Unit firewalld.service could not be found.
# rpm -qa | grep firewalld
#
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標準リポジトリから firewalld をインストールし、デーモンを起動&自動起動するように設定しておきます。
| yum -y install firewalld
systemctl enable firewalld
systemctl start firewalld
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Step.14
初期状態では当然、ポート転送ルールが存在しません。
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14 | # firewall-cmd --list-all --zone=public
public
target: default
icmp-block-inversion: no
interfaces:
sources:
services: ssh dhcpv6-client
ports:
protocols:
masquerade: no
forward-ports:
source-ports:
icmp-blocks:
rich rules:
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ここでは以下のようなポート転送ルールを設定します。
グローバルアドレス (EIP) |
着信アドレス |
着信ポート |
転送先アドレス |
転送先ポート |
13.xxx.xxx.57 |
192.168.224.53 |
TCP/80 |
10.0.0.1 |
TCP/80 |
3.xxx.xxx.110 |
192.168.224.8 |
TCP/80 |
10.0.0.2 |
TCP/80 |
これを firewalld の Rich Rule として定義すると以下のようになります。
| firewall-cmd --zone=public --add-masquerade
firewall-cmd --add-rich-rule='rule family="ipv4" destination address="192.168.224.53" forward-port to-addr="10.0.0.1" to-port="80" protocol="tcp" port="80"'
firewall-cmd --add-rich-rule='rule family="ipv4" destination address="192.168.224.8" forward-port to-addr="10.0.0.2" to-port="80" protocol="tcp" port="80"'
|
設定が完了したら改めて firewalld のルールを確認すると Rich Rule が設定されたことが分かります。
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16 | # firewall-cmd --list-all --zone=public
public (active)
target: default
icmp-block-inversion: no
interfaces: eth0
sources:
services: ssh dhcpv6-client
ports:
protocols:
masquerade: yes
forward-ports:
source-ports:
icmp-blocks:
rich rules:
rule family="ipv4" destination address="192.168.224.53" forward-port port="80" protocol="tcp" to-port="80" to-addr="10.0.0.1"
rule family="ipv4" destination address="192.168.224.8" forward-port port="80" protocol="tcp" to-port="80" to-addr="10.0.0.2"
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問題無さそうであれば firewalld のルールを保存します。
| firewall-cmd --runtime-to-permanent
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これで Amazon Linux2 でポート転送出来るようになっているはずです。