Administrative Distance / Route Preference 値は各社実装ごとで異なる可能性がある

「複数のプロトコルで同じ経路を学習している場合、どのプロトコルを優先するか?」という指標を、各社で以下のように呼んでいます。一般的には「値が小さい程、優先される」という振る舞いをします。

メーカー 呼び方
Cisco 「Distance」または「Administrative Distance」
Juniper 「Route Preference」
MikroTik 「Distance」または「Route Distance」

稀に「〜 プロトコルの AD 値は xx だよね」と回答される方がいますが、この「優先指標」は各社の実装によって差があります。ですので、「Cisco の値しか知らない」「各社製品が全て同じ値だ、と思い込んでいる」と、意図しないトラフィックフローを設計してしまう可能性があります。例えば、以下のような注意点があります。

  1. eBGP と iBGP だと、Cisco では「eBGP = 20 / iBGP = 200」だが、Juiper だと「いずれも 170」
  2. OSPF と eBGP だと、Cisco では「eBGP 優先」だが、Juniper だと「OSPF 優先」

代表的なプロトコルを一覧にすると、以下の通りです。MikroTik RouterOS の Distance は全て Cisco ISO と同じです(ちなみに「MME」とは RouterOS 独自のルーティングプロトコルです)。

Protocol RouterOS Cisco IOS JUNOS
Connected 0 0 0
Static 1 1 5
EIGRP Summary - 5 -
OSPF Internal - - 10
IS-IS Level1 Internal - - 15
IS-IS Level2 Internal - - 18
eBGP 20 20 170
EIGRP Internal - 90 -
IGRP - 100 -
OSPF 110 110 -
IS-IS - 115 -
RIP 120 120 100
EGP - 140 -
MME 130 - -
ODR - 160 -
IS-IS Level1 External - - 160
IS-IS Level2 External - - 165
EIGRP External - 170 -
iBGP 200 200 170